電気科の苦悩

色々やっています

デルタループアンテナの製作 その2

この記事の続きです

 

kstak.hatenablog.com

 

 

具体的なアンテナ案

 7MHzは冷静に考えて大きすぎたので人が多そうでアンテナが作りやすい50MHzにすることにしました。

 

 

 

 正三角形状にアンテナを構築すると入力インピーダンスが100Ω程度になる。これをqマッチングでインピーダンス変換してリグからみて50Ωのインピーダンスになるように変換する。

 

 SWRを考えるのは難しいけど、最大電力供給の理のように考えれば簡単。線路上のインピーダンスが50Ωなら負荷のインピーダンスも同じ50Ωで最も大きな電力を供給できる。これと同じような事が起きている。

 

 SWRの考え方はアマチュア無線を始めて色々勉強して2年経ったけど未だよく分からない。でもアマチュアだからカットアンドトライで切り詰めて調節するのが一番かもしれない。

 

素材の加工

 まずはパイプを調達します。倉庫を探したら大量の4m長のアルミパイプがあったので使う事にしました。50mhzの1波長は6m、それを3で割った2mが正三角形の一辺の長さになるので丁度良かったです。

 

 

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 まずは適当に2mずつパイプカッターで切断します。切断したら金属用ドリルで穴を空けていきます。

 

 パイプに開ける穴は予め決めておきます。今回はまずホームセンターでいい感じのビスを探し、ビスに合わせるように穴を空けました。ビスはM4で長さ40mm程度のものです。また、取り外し易い様に蝶型のナットを買いました。合わせて、ループの一辺は導線にするのでそれを接続するための丸穴の圧着端子を買います、これは直径4.4mmぐらいの穴が空いたものです。

 

 

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 パイプの穴あけ後は導線に圧着端子を圧着させます。圧着させたら念の為、ハンダ流して保護します。

 後で分かった事ですが、圧着端子をハンダ付けするとハンダと圧着端子の熱膨張率が異なる事により、クラックが入りやすくなるのでハンダ付けしないで下さい。

 

 

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 以上でアンテナに関しては加工完了で、次はアンテナを設置する台を作ります。

 

 

アンテナ組み立て

 最初に給電部を作ります。加工のしやすさを考えるとプラスチックのまな板を使うのが一番楽です。

 

 適当なサイズのまな板を買ってきます。ここにアンテナのパイプを設置し、Vの字型にします。

 

 

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 パイプ固定の為、適当な径でパイプの重みに耐えられそうなU字金具を買い、径に合わせてまな板にドリルで穴を開けます。1パイプ2金具、計4つのU字金具を使ってパイプが動かない様に固定します。SWR調整の時はV字の開く角度よって微調整します。

 

 最後に圧着した導線と穴を空けたパイプ間にビスを通してから固定、デルタループを作ったらアンテナは作成完了です。

 

次にバランを作って繋げればアンテナの完成です!

 

 

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 アンテナらしくなってきました。

 

バランの考え方

 バランはqマッチング方式にて行います。理論的な背景については分布定数回路理論を用いる必要があり、私もよく分かっていないので省略します。でもいずれ解説します。

 

 まずマッチングの必要性を検討してみましょう。仮にデルタループアンテナに50Ω同軸を直結させたらどうなるでしょうか?理想的にデルタループのインピーダンスが100Ωだとすると、出力インピーダンス50Ωに対して負荷インピーダンスが100Ωであり、入力信号はアンテナ接続部にて反射して無線機まで跳ね返ります。すなわち、不整合になって十分にアンテナで電力消費がされません。1の入力に対して実際に飛ぶのが0.6とかになってしまいます。このような入力と実際にアンテナに乗る電力の比がSWRでした。跳ね返りを減らせばSWRが改善される事は容易に想像できます。では、どうするのかというと最大電力供給の定理を考えます。

 

 これは負荷インピーダンスと線路のインピーダンスが等しければ電源より最大電力が取り出せるという定理です。今回は線路(同軸)のインピーダンスが50Ωなので、負荷も50Ωなら最大電力が供給されます。しかしアンテナのインピーダンスは100Ωで固定されているのでもうどうしようもないように見えてしまいます。アンテナの寸法等を変えれば50Ωに近づくかもしれませんが、そうなると最下点がズレてしまったりしてガバガバになります。

 

 そこでアンテナに手を加えず無線機から見たアンテナのインピーダンスを変換させます。この変換がマッチングというわけです。

 

 

 以上の議論より、100Ωのアンテナにマッチング回路を追加してなんとか50Ωにならないかと考えることにします。マッチングの回路には色々な種類があります。

 

  • 1/4λ迂回回路(1:4)
  • qマッチング(1:2)
  • ガンママッチング(忘れた)

 

マッチング回路による違いは製作方法は当然の事ですが、アンテナのインピーダンスを何分の何倍に変換するのかが変わります。

 

  1/4λ迂回型は1:4、つまりアンテナのインピーダンスを1/4にします。本当アンテナは100Ωと想定しているのでこれでは100/4=25Ωになり小さすぎます

 

  qマッチングは1:2、つまりアンテナのインピーダンスを1/2にします。これだと100/2=50Ωで所望の値を簡単に得られます。

 

 ガンママッチは調べてませんが、作ってる人がいたので載せときました。

 

 長くなりましたが、いよいよバランの製作です。qマッチングでうまく行くはずです。

 

バランの製作

 何度も言ってますが、qマッチングします。qマッチングのバランの作り方は非常に簡単です。簡単ですが、作ってみると耐久性の無さが問題になります。

 

  qマッチング回路の作り方は、75Ω系の同軸である5C2Vを使う物が一般的な様です。なお、普通5C2Vはテレビとアンテナを繋ぐ同軸として使われています。波長λの周波数に対してqマッチングする場合、1:2バランであるならばλ/4掛ける短縮率の長さに切った5C2Vを50Ωの同軸とアンテナの間に入れるだけで完成します。

 

 5C2Vの短縮率は0.67であり、50MHzの波長は6mなので6/4*0.67=1mの5C2Vを用意します。ただし、ケーブルを加工する関係上、気持ち多めに取った方が良いです。

 

 まずはケーブルの片方の外部絶縁体をカッター等で切って剥がします。

 

 銅の外導体が現れます。さらに外導体の先端を切除し、内部絶縁体も取ります。すると心線が出てきます。

 

 外部導体と心線にそれぞれ別の導線を半田付けし、片側は圧着端子を付けておきます。心線はハンダ付けし難いので圧着端子の圧着するところだけをニッパーで切って利用し、導線と心線を圧着するようにしてハンダ付けすると安心します。

 

 これで5C2Vの内導体と外導体のそれぞれがアンテナのパイプ2つに接続されます。

 

 最後に5Dの同軸と5C2Vの同軸を継ぎます。先程同様に外導体と内導体を出し、心線同士と外導体同士で半田付けします。外導体の半田付けが難しいので、アルミ缶などを適度なサイズにカットして同軸間で橋を渡すと良いと思います。私は太い銅線で橋渡ししてからハンダ付けしました。

 

 この接続点は非常に脆いので心線と外導体のそれぞれで自己融着テープを巻き、補強します。

 

 さて、最後に5Dの同軸の末端にMコネクタなどをを付けて完成です。

 

 これでアンテナとバランの接続が出来たので、一応アマチュア無線用のアンテナっぽくなりました。しかしこれでうまく行くと限りません。次は測定です。

 

測定

 まずは部室から出て廊下で組み立ててAA-600でSWRを測定します。

 

 

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 一応SWRは無限じゃないのでうまく接続は出来ている見たいです。しかし最下点が悲惨です56MHzってなんなんですか?かなり綺麗に落ちているのが悔しいです。

 

結論

 またしてもアンテナ作りに失敗しました。魔剤アンテナは施工不良、今回は設計ミスです

 おそらく一番最初にした一辺2mにすれば上手くいくという仮定が誤りでした。実際はもっと大きなループにしないとダメみたいですね。

 

 という訳でMMAMAでシュミレーションをします。

 

 デルタループを作って測定します。

 

 

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 やはりずれています。

 

最適化するとアンテナ長が合計(2.16-2)*3≒50cm程度伸びました。やっぱり設計ミスじゃないか…(激怒)

 

 

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シュミレーションがいかに偉大かを身をもって実感しました。

 

次の課題

 最下点がおよそ56MHzになってしまった。理論だけに縋っていると失敗する良い例になったと思います。MMAMAでシミュレートしたら、2mの正三角形ではやはり55MHz付近で落ちていたのでやはり元々の設計で失敗していた事も分かります。

 

 最適化をしたら一辺2.167m程度の正三角形がベストと分かったので、再びアルミパイプを切断して施工をしてみます。バランはできているのでカットと穴あけさえ出来ればOK。ドリルを使うときは金属用のドリルでかつ回転の方向に注意しながら加工しよう。掘り込む方向と逆向きに回転させて歯が壊れた!とかこれは木材用だ!などと馬鹿騒ぎするのはしないようにしようね(戒め)。

 

 シミュレートでインピーダンス150ぐらいだったけどqマッチングで大丈夫なんだろうか?まあ設計ミスった所でSWRの最下点はかなり落ちてたし大丈夫かな?

 

エレメントの再製作

 上記の議論からエレメントを長くとれば良いことが分かったので、2.5m程度にエレメントを拡張し、SWRを測定しながらエレメントを短く切り詰めることにしました

 

 大学の飲食スペース付近に三脚とアンテナを持っていき、測定を行いました。75mh程度で共振しています。

 

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 ここからエレメントを切っていきます。

 

 

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 これだけ切りましたが

 

 

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 どうやっても75mhzの共振になってしまい、埒が明かなくなったので製作をやめました。

 

色々原因を考え、次のような問題点を思いついたり、教えてもらいました。

 

  • アルミパイプのメッキにより非導通箇所がある
  • バランの施工不良
  • 三脚にアンテナ線が短絡している

 

 バランをとって直付が上記SWRですし、ヤスリをかけてもSWRは変化しません。アンテナはよく分かりません…

 結局、三脚に接触部分があっておかしくなったのではないかという結論に至りました。

 

対策

 学祭や展示会に持っていったところ、他大学のOBの方からアルミパイプではなくワイヤで1ループ作り、釣り竿2つで支える方法を提案されました。

 

 確かにそのとおりですが、作例が溢れていて面白味に欠けると思いました。しかしちゃんと動作しない方が問題なので今度は全てのエレメントをワイヤで作ろうと思います。

 

 結局、アンテナ製作は失敗し、アルミパイプは加工が難しいのでしばらくは使いたくないと思いました。

 

 次は7mhzの釣竿GPを作ろうと思います。ローディングコイルをどうするかと給電部の施工、カウンターポイズなど色々難しそうな所がありますが、楽しみながら製作しようと思います。